執筆:神田
1980年代、僕は今とは違う会社に勤務していて今とは逆に翻訳会社に翻訳を依頼していた。 当時はパソコンがまだ十分には普及していなかった時代で翻訳の主流は「手書き」だった。大きな文字でA4用紙1枚翻訳するだけで8千円ぐらい。 高いと思うかも知れないが効率が悪いので仕方ない。世の中には多くの翻訳会社があって、それぞれの翻訳会社は十分に飯を食うことが出来ていた。
その後、コンピュータとインターネットの発達で効率化とボーダーレスが進行し、翻訳会社もそういった技術が使えないと生き残れなくなった。 また、発注側も次第に昔からつながりがある翻訳会社からよりコスパの良い翻訳会社に発注するように変わっていったので、当然、翻訳会社側としても低料金でクオリティーの高い翻訳をしなければ生き残れなくなった。 そして追い打ちをかけるようにリーマンショックでガタっと仕事が減り体力のない翻訳会社は潰れていった。
そして今度は人工知能を使った自動翻訳(AI翻訳)の波がやってきた。まだまだAI翻訳では高度な翻訳までは出来ないものの、日常的な単純な翻訳程度であれば実用に耐えるレベルにあると筆者は考えている。 今後、更に技術が進むと高度な翻訳まで出来るようになるだろう。 しかも、人間の翻訳者はケアレスミスもするしそれぞれの翻訳者の能力にバラツキがあるため品質も不均一であるが、AI翻訳の場合は人間がするようなケアレスミスはしないし品質も均一な訳で、やがて、人間の翻訳者は不要となるだろう。そうなった時点で大部分の翻訳会社は社会的な役割を終えることになると考えられる。
公証の取付や翻訳証明書の添付を必要とするような翻訳の場合には、最終的には翻訳者が責任を負うための署名が必要なので当面はそういったニーズに対応するための翻訳会社は残るものの、次第に、書類を提出する側が翻訳書類を用意する必要が無くなり、書類を提出する先でAI翻訳を行うように変化(つまり言語バリアが無い状態になる)のではないかと推測する。そうなった暁には公証の取付や翻訳証明書の添付を必要とするような翻訳で飯を食っていた最後の生き残りもお役御免となる。
高度なレイアウトを必要とする翻訳も同じ運命だ。 やがて、原稿のレイアウトに準じてキレイに翻訳できるよう技術が進むだろう。 早かれ遅かれ、現在の翻訳会社がやっているような作業はAIでも出来るようになる。なので、翻訳会社としてはAIが逆立ちしても出来ないような何かを創造していかなければ生き残れないのだけれども、果たしてそういった何かは存在するのだろうか?
あと数年はAIに食われることは無いとは思うけど、食われる前にそれを発見しなければAIジャングルの中で食われて死ぬ。つまり倒産だ。そして従業員は他の仕事を求めて漂浪するんだろうな。果たして受け皿はあるのだろうか? ベーシック・インカム制度が出来て遊んで暮らしてもいいって言うんだったら、それはそれで僕的には朝から晩までやりたかった事ができるので非常にうれしいけど、借金で国が潰れそうな日本がベーシック・インカム制度を導入できるとは到底思えないしね・・・。いっその事AIとは無縁な後進国に移住した方が幸せになったりしてとか考えてしまいますよ。
今日はここで筆を置きます。ではまた。